難破船の甲板でオレは寝言を言う

一回目の人生は強制終了させました。もう40代後半にも入ろうとしてるのに。

怒涛の派遣会社廻り④

「恐れ入ります、◯時から面談予約を入れております只野と申します。もしよろしければなんですが、予定より早く伺えそうなんですがご都合の方はいかがでしょうか?」

 

二社目のRが早めに終わったので三社目Pに連絡を入れてみた。

 

Pは派遣大手、もしかしたら世間的には一番知名度の高い会社かもしれない。昔からPのことは知っていたが一度も登録したことがなかった。昔、私はイベントの仕事や営業の仕事で派遣に登録していたので、事務系派遣が大半の案件であるPは割りと縁の薄い会社だったのが一番の理由だと思う。

 

早めに来てもらっても対応できるとのことだったので、予定より30分早くPの新宿支店に足を運んだ。

 

 

 

 

夕方、少しオフィスに影がさしかかる時間頃、私はPのブースに座っていた。

ほどなくして妙齢の落ち着いた感じの美人の女性コーディネーターが現れた。

「よろしくお願いいたします。」

 

双方丁重におじぎをし、席に座る。席についたと同時に、私はあいさつがてらこう言ってみた。

 

「多少キツめの仕事でもかまいません。キャリアアップを図れるような仕事を紹介してください。」

 

どちらかといえば意気込み的な意味合いだった。

 

 

ところが女性コーディネーターは落ち着いた口調でこう言った。

 

「弊社の場合はキャリアアップというよりは・・・今お持ちのスキルをできるだけ生かせるようなお仕事をご紹介する方針なんです。」

 

正論である。このコーディネーターのおっしゃるとおりだ。ただ、今まで今後の抱負や前向きな姿勢をアピールする的な発言をした時にこうやって正面切って正論を言われた経験がほとんどなく、なんとなく出鼻をくじかれた感じがした(苦笑)。ペースが狂う。

 

まあでも、その通りだよなと思い直し、面談のやり取りに集中することにした。

 

簡単にプロフィールを確認、事前登録した情報に相違がないか、身分証の確認、他の派遣会社では経験しなかった、総じて「お堅い」手続きがつづく。Pってこんな感じなんだな。

途中タイピングテストを挟み(タイピング力は想像以上だったらしく、かなり褒められた)、キャリアの確認が詳細に行われた。先方はヒアリングしながら、クライアント提出用に書き直しをしているようだ。

 

長い時間かけて(小1時間くらいか)ヒアリングが終わり、希望職種についていくつか訊かれる。正直に答えたところ、先方はうーんという表情に。私にしっくり当てはまるような仕事がないのだろうか、話を訊く限りやはり女性向け案件が多いらしい。提示された案件の二、三もどうもピンと来ないやつである。

 

私はそこでこう言った。

「年齢的にも厳しいのは重々承知です。でも全力で働きたいんです。よろしくお願いします!」

 

これは冒頭のアピール的な気持ちではなく、心からの本心だった。今のところしっくり来る案件に遭遇していない。大手だろ?こちらはそれなりに厳しい経験をしてきたし、使えないわけではないと思うんだ、応募するところさえもないとは言わせないぞという気持ちだった。

 

それが功を奏したのか、彼女は、わかりました、今ここに出した以外で当たってみますとしっかり私を見つめて言った。

 

 

 

 

当日の面談でのやり取りは以上だったが、翌日に連絡があり、是非一度受けてみてほしい募集案件があるとのこと。条件や詳細を聞いて、うーん、特別良いわけではないけど悪くはないなという印象の案件で、いくつかのやり取りの後翌週にクライアントの会社見学(実質の面接。事前面接は派遣会社とクライアント企業の間では表向き禁止されている)のスケジューリングを組むことに。社内選考は通った形なんだなと理解した。久々の面接になる。

 

 

とりあえず今日はこれで終わり。明日も一件会社訪問が控えている。

 

一日三社周り、若干疲れたがとりあえず行けるだけは行ったぞ、と少しの達成感のもとゆっくり休むことに。精をつけるためにもと思い、帰り道スーパーでうなぎを買って食べた。

 

 

 

 

明日も頑張ろう。

 

 

つづく。